名古屋圏の事務所家賃の相場状況
名古屋圏のオフィス・事務所家賃(賃料)相場の状況
米系不動産サービス会社「シービー・リチャードエリス」(東京)が発表した2009年のオフィスビルの賃料改定動向によると,名古屋市内の平均賃料改定率は前年比7.1%減で,3大都市圏で最大の落ち込みとなりました。
名古屋の賃料改定率のマイナスは2年連続。家賃(賃料)を減額したのは,全体の62.6%を占め,東京23区(38.6%)や大阪市(50.5%)を上回りました。
名古屋中心部のオフィスビル空室率も,不況で13.30%(7月末時点・三鬼商事調べ)と高止まっています。
このような状況のもと,競争激化で賃料も下がり,家賃(賃料)相場に値ごろ感が出てきたと言えることから,オフィス・事務所の前向きな移転の動きが多く見られることが期待されます。
① 景気悪化の影響
オフィス・事務所の空室率上昇の背景には,世界的な景気の減速で,国内外の企業が都心のオフィス拡大を手控えたり,縮小に入っている事情があります。
長引く不況による企業の業績悪化で,名古屋市中心部のオフィスビルにも「空き」が目立つようになってきました。経費節減を迫られた企業が,オフィスの一部を返却したり,賃料の安い地区に移転したりするケースが増えているためです。
景気悪化の影響によりビルに入居するテナントが撤退・縮小させる動きを加速させる中,ビル所有者が引き留めのために賃料の減額を余儀なくされた結果,オフィス・事務所家賃(賃料)相場が下落したものと考えられます。
② 新しいオフィスビルの相次ぐ完成による供給過剰
好況期の投資ファンドによる不動産開発などで名古屋のオフィスは供給過剰になっており, 名古屋中心部では今後もオフィスの供給過剰が強まると考えられます。
□名古屋中心部の大型ビルのオフィス面積
2007年:83万坪
2008年:86万坪
2009年:90万坪
□名古屋駅周辺の主な大型再開発されたプロジェクト
・名古屋ルーセントタワー(2007年1月開業)
・ミッドランドスクエア(2007年3月開業)
・モード学園スパイラルタワー(2008年3月開業)
・愛知県産業労働センターウインクあいち(2009年10月開業)
・大名古屋ビルヂングの建て替えに伴う再開発(2015年完成予定)
名駅や栄周辺では今後も超高層ビルの建設が計画されていますが,長引く不況の影響で計画の見直しを迫られるケースが相次いでいます。
・ 「グローバルゲート(仮称)」(ささしまライブ24地区)
高さ:170m・100m→170m・88mに変更
・ 「名古屋駅新ビル(仮称)」(名古屋ターミナルビル跡地)
高さ:260m→220mに変更
・ 「納屋橋東ツインビル(仮称)(納屋橋東地区市街地再開発準備組合)
高さ:170m・140m
→今年度予定の再開発組合への移行を見送り
・ 「ダイエー栄店跡地」
→不況のあおりで建設計画白紙
・ 三菱東京UFJ銀行名古屋ビル西隣(三菱地所所有地)
→着工時期などの詳細は未定
・ 名古屋中央郵便局駅前分室の建て替えに伴う再開発(41階建の複合ビルの建築計画)
2013年度完成予定 →完成時期を数年先送り
7月末時点における名古屋市内の主要ビジネス4地区(名駅・栄・丸の内・伏見)では、賃貸オフィスビルの平均空室率が13.30%(三鬼商事名古屋支店調べ)に達し,ビル間のテナント誘致競争が家賃(賃料)を押し下げています。名古屋ビジネス地区の7月末時点の新築ビルの空室率は29.41%(三鬼商事調べ)と高止まっており,オフィス市況の回復が遅れれば,名古屋中心部のオフィス・事務所の空室率は大幅に上昇し,家賃(賃料)相場もさらに下がる可能性があります。